企業分析

【決算分析】王子ホールディングス(3861)赤字転落の背景と今後の投資判断

2025年8月4日に発表された、王子ホールディングス(3861)の2026年3月期第1四半期決算は、売上高は伸びたものの営業利益・純利益ともに大幅減益となり、最終赤字に転落する厳しい内容となりました。

◆ 決算サマリー(2025年4月〜6月)

項目数値前年同期比
売上高4,574億円+4.4%
営業利益37億円▲74.5%
経常利益▲36億円赤字転落
親会社純利益▲52億円赤字転落
1株あたり純利益▲5.57円前年は+18.00円

◆ 赤字の主な要因

  • 原燃料・物流・人件費の上昇
  • 海外パルプ市況の悪化
  • 為替差損の発生(外貨建債権債務の評価替え)
  • ニュージーランドでの段ボール事業撤退に伴う特別損失

◆ セグメント別の状況

主力の「生活産業資材」や「資源環境ビジネス」など、ほぼすべてのセグメントで減益または赤字に。

  • 生活産業資材: 売上+9.8%だが、営業利益は▲94.2%
  • 印刷情報メディア: 赤字転落(▲3億円)
  • 資源環境ビジネス: パルプ市況悪化で営業利益▲65.4%

◆ 財務面は安定的

  • 自己資本比率:40.0%(前年は41.8%)
  • ネットD/Eレシオ:0.8倍(目標の1.0倍以内を維持)
  • 純資産は前年より659億円減少(配当支払・損失計上・自己株取得など)

◆ 配当・株主還元

  • 2026年3月期の年間配当予定:36円(前期比+12円)
  • 配当利回りは株価500円前後なら6〜7%と高水準
  • 中期計画では自己株取得1,200億円も掲げており、還元姿勢は◎

◆ 中期計画「2027」のポイント

王子HDは「長期ビジョン2035」の実現に向けた準備期間と位置づけ、以下の改革を進めています。

  • 不採算事業からの撤退
  • 高付加価値分野・成長地域(インド・ASEAN)への集中投資
  • 資産売却と還元の両立
  • ROE目標8%、営業利益1,200億円(2027年度)

◆ 投資判断:中長期視点で「様子見〜押し目買い」

第1四半期の業績は非常に厳しい内容でしたが、中長期での構造改革や海外成長戦略、株主還元の強化姿勢など、評価できる点も多いです。

短期的には赤字・原価高・為替リスクがあるため様子見が無難。
しかし、株価がさらに下がり、配当利回りが高水準で安定すれば、押し目買いのチャンスとなる可能性もあります。

📌 まとめ

  • 短期:赤字・市況悪化で買いづらい
  • 中長期:構造改革・還元強化で投資妙味あり
  • 配当狙いのバリュー投資家は注目してよい水準

今後の原燃料価格動向や第2四半期決算に注目しつつ、戦略実行力に期待していきたい銘柄です。

※投資は自己責任でお願いします。最新の株価・市況に注意を払いましょう。